Dear Prince
4
人魚姫…みくるさんがシーツを交換するのに気を取られている間に、小屋を出た。
意識のない彼を置いておくのは心残りだが、
今まで世話をしてくれた彼女たちなら大丈夫だろう。
だが彼が帝国の…敵国の王子である事がばれるまで時間があるとは限らない。
ハルヒ姫にも見つからないよう一度自分の家に戻る必要がある…。
僕は記憶した道順を正確に辿り、程なく家へと戻った。
思ったより近い距離だ。
またあの小人たちが連れ戻しに来ることもたやすいだろう。
急がなければ。
僕はある男へ手紙を書いた。
書き終えると裏に隠してある鳥舎へと向かった。
そこには数羽の伝書鳩がいた。
「頼みましたよ。」
パタパタと音を立てて、一羽空へ飛んだ。
(…あの暗号は今は彼にしか解けない…頼みましたよ…「会長」…。)
「…見つけた…。」
鳩の姿が見えなくなった直後。
小さな声がまた低い場所から聞こえた。
「…優秀ですね…。」
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世を捨てた軍師が鳩を放ってからおよそ一日が経過した頃。
大帝国の王城にて、王は大臣を相手にいつ隣国に出兵するかを話し合っていた。
「あのような小国、すぐにでも落とせよう。ぐずぐずする事もあるまい。」
「は…ですが王子が行方をくらまされている今、国をむやみに騒がせるのは…。」
「ふん…あんな臆病者、いればいたで出兵の反対をするのは目に見えている。
なんなら追放なり死亡なり理由をつけてもかまわんぞ?」
「それは…。」
「…。」
玉座の間でのやり取りを聞いていたその影は一つ息をつくとそこを後にした。
(あのバカ…どこに行ったんだ…?)
長い廊下を歩きながら、彼は常に面倒臭そうな表情を思い出す。
今彼がもっとも見たい顔でもあった。
もう行方をくらませて一ヶ月にはなるか。
(お前がいなくなったらお前の義理の親父はとたんにあの様だ。
世界を征服するなんて言い出しやがった。
あんな奴に戦争させたら国が滅びちまうぞ。)
それが分かっているから、
彼の上司である大臣は必死で出兵を止めているが…。
限界は近くに来ている。
(くそ…。)
苛立つ気持ちに、羽音が響いた。
「…何だ?」
そこに見覚えのある鳩が飛んできた。
その記憶は気に食わない顔とつながっていた。
To be Continued…
また時間をおいてすみません。再録なのに…。
ここで会長登場ー。彼は副大臣です。
ちなみに大臣は趣味で新川さんです♪
あ、すみません政治とかぜんっぜんつっつく気はありませんので。
一応絶対王政つらぬいてもらいます。
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